2013年1月30日水曜日

ぐるぐるグルコサミン考。


久しぶりの“記事更新”についてはスルーさせてもらうことにして、ふと「グルコサミン」が気になったものだから、この物質・存在についての情報整理をしてみたい。「ぐるぐるぐるぐるぐるこさみん♪」のテレビCMなどで、巷で販促されているソレについて。

さっそく「ぐるぐるぐるぐるぐるこさみん♪」のCMを流す世田谷自然食品のサイトを見て見ると、「累計売り上げ個数1400万個突破!」と喧伝。「多くのお客様にご愛飲いただいて」いるという。けれど該当ページを見ても、「グルコサミン」が何なのか、よく分からない。分からないような表記しかない。

おそらく医薬品等の広告規制(薬事法)の関係もあるだろう。見出しはこんなだ。「歩く・散歩など毎日の快適な生活に。大切なのは“軟骨成分”。『グルコサミン+コンドロイチン』」。「グルコサミン」とは何なのか分からない人たちに向けて、さらに「コンドロイチン」と新ワードを追加する。

「グルコサミン」とは何なのか。なぜ「多くのお客様にご愛飲いただいて」いるのか。ちょっとだけヒントになる文章があった。「グルコサミンやコンドロイチン、コラーゲン、ヒアルロン酸等は、歳とともに、不足していきます。そこで大切なのは軟骨成分です」。

続けて「新しいグルコサミンやコンドロイチン等の成分を補充してあげることをおすすめします」とある。うーん。この文章を式にすると「グルコサミンはコンドロイチンと同じ何か=軟骨成分」。「グルコサミン=コラーゲンと同じ効能を持つ」といったところだろうか。

Wikipedia先生によると、「グルコサミン」は「C6H13NO5」。「グルコースの一部の水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖の一つ」だそうだ。もう途端に分からなくなる。さらには「動物においては、アミノ基がアセチル化されたN-アセチルグルコサミンの形」という。

ついでに言うと、「糖タンパク質、ヒアルロン酸などグリコサミノグリカン(ムコ多糖)の成分」だってさ。辛うじて僕に通じそうなのは「グルコサミンは、自然界ではカニやエビなどのキチン質の主要成分として多量に存在している」という箇所。けど「キチン質」って何だ。

そんな風にして、巷で“ブーム”となっている「グルコサミン」については、さっぱり分からない具合なのだ。きっと高齢者の方たちも実はさっぱり分からないで“ご愛飲”しちゃっているのではなかろうか。まあ、僕たちは「ビタミン」や「たんぱく質」すらも良く知らずに飲食しているのだけれど。

少しづつ整理していってみる。「グルコース」は「ブドウ糖」。広義では「三大栄養素」の炭水化物(糖質)と同義とされる。僕たち人間はもちろん、動物や植物が活動するためのエネルギーとなる物質の一つが「グルコース」だ。「グルコサミン」はこのグルコースの一部のなんちゃらかんちゃらなのだ。

化学の世界では、「-OHで表される原子団」のことを「水酸基」というらしい。あるいは「ヒドロキシル基」と呼ぶ。この「水酸基」を持つ化合物は、「水、金属の水酸化物、酸素酸、アルコール、フェノール、カルボン酸などがある」(百科事典マイペディアの解説より)。

「グルコサミン」=「グルコースの一部の水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖の一つ」=「炭水化物の一部の“-OHで表される原子団”がアミノ基に置換されたアミノ糖の一つ」。うーん、「アミノ基」って何だ。「アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物の総称」らしい。

そうやってネットに浮かぶ“知のネットワーク”を駆使しながら、言葉を取っ換え引っ換えしていく。こうして「グルコサミン」について迫りながら、まずは化学の勉強をイチからやり直さねば、との思いに至る。もしかしたら「おじいちゃん」「おばあちゃん」たちも放送大学などで勉強し直しているかもだけど。

で、別の「グルコサミン」紹介サイトを参考にすると、「グルコサミン」はカニやエビなどの甲骨類の抽出精製物。僕たちヒトでは、軟骨や爪、靱帯などにあり、軟骨細胞を形成する成分。関節部分の細胞の新陳代謝に重要な役割を果たす。という。ふむ。

そもそも加齢や運動不足などで軟骨の再生不良が起きると、腰痛や膝の痛みが発生し、関節炎などに進行することがある。そこで「そうだ! グルコサミンがあるではないか!」という図式。「膝の痛みに効く」、「関節の動きをなめらかにする」らしい。

さらには「コンドロイチン」。これは軟骨組織や関節液に存在するもので、「グルコサミン」が「コンドロイチン」の主原料となるようだ。コンドロイチンは、タンパク質、核酸(DNA)に続く“第三の生命鎖”として注目されている糖鎖化合物「ムコ多糖」という。

「ムコ多糖」。コンドロイチンは、タンパク質に結合して存在する。このことから成分的には「ムコ多糖類」という分類がされていて、「タンパク質をもつ多糖」という意味らしい。糖鎖化合物の一種で、文字通り糖が鎖状につながった複雑な形をしている。

「コンドロイチン」と「グルコサミン」は、その性質はよく似ている。ともに動物の体内に多く存在するし、軟骨の再生に大きな影響力がある。ただ、「コンドロイチン」が保湿などの特性で軟骨の維持や保護を助けるのに対して、「グルコサミン」は軟骨の再生そのものに役立つ。

よって、「グルコサミン」で再生された軟骨は、「コンドロイチン」で保護、維持されていく……。などなど、デジタルネット空間の情報を拾い集めてみると、何となく「グルコサミン」の全容が見えてきた。と同時に、人間、生命体の複雑なシステムにも気付かされる。

「生命とは何か」という問いに迫る『生物と無生物のあいだ』 (講談社現代新書)には、こんな言葉がある。「私たち生命体は、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい『淀み』でしかない」。その分子の淀みは、加齢とともにさらに淀む。それへ抗う手段の一つが「グルコサミン」。

生物と無生物のあいだを隔てるもの。その一つには“自己複製”の有無がある。そして自己複製後、それは劣化する。僕らはその劣化に抗う。劣化以外にも抗う。抗いながら生きていく。歴史が生まれ、思想が生まれ、健康食品も生まれる。うん、実に複雑な生命・歴史・社会システムだ。

◇おしまい