2012年8月29日水曜日
「アイザック」について
今日のニュースのトピックスには、こんなのがある。「米国立ハリケーンセンター(NHC)によれば、メキシコ湾を北上していた熱帯低気圧『アイザック』が28日、ハリケーンとなり、米南部ルイジアナ州に上陸した」(産経新聞)。
オバマ大統領はルイジアナ州に続きミシシッピ州に非常事態を宣言。時事通信によれば、「一帯では2005年、ハリケーン『カトリーナ』の直撃により約1800人の死者が出ており、最大の被災地となったニューオーリンズ市内は厳戒態勢に入った」という。
カテゴリーは5段階で一番弱い「1」。しかしながら、計4州が非常事態宣言を出して警戒を強めている。そんな「アイザック」について哲学者が語る時、ほとんどは物理学者の「アイザック・ニュートン」だろう。あるいはトリビア好きなら作家の「アイザック・アシモフ」だ。
どんな経緯でメキシコ湾を北上した熱帯低気圧が「アイザック」と名付けられたかは、僕は知らないけれど、そんな「アイザック」について、あえて「気象考シリーズ」ではなく、「アイザック考」で、つらつら書き留めておきたい。特に「アイザック」に思い入れはないのだけれど。
Wikipedia教授によれば、「アイザック(英語: Isaac)は、英語(特にユダヤ人)でポピュラーな名前(ファーストネーム)の1つ」とある。ギリシア語読みは「イサキオス」。旧約聖書の『創世記』に登場する「イサク」の英語読みという。
なるほど、「アイザック」はあの「イサク」だったのか、と一人納得してみる。イサクの父の方が有名で、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の始祖、「信仰の父」とも言われるアブラハム。母はサラ。サラは「サライ」とも呼ばれている。
イサクの父「アブラハム」。ユダヤ教の教義では、全てのユダヤ人の、またイスラム教の教義では、ユダヤ人に加えて全てのアラブ人の系譜上の祖とされている。彼の妻サラは不妊の女だった。と旧約聖書である。
アブラハム夫妻は子どもを持つことなく年老いた。サラは90歳になった。けれど神はサ二人に子どもを授ける。神は「イサク(彼は笑う)と名付けよ」と言った。でも非情な神は、幸せを与え、その幸せを奪う神でもある。
アブラハムの信仰を試そうとして、神はアブラハムに「イサクを生け贄に捧げよ」と求めた。焼き殺せ、と言った。神に従順なアブラハムは、泣く泣くこれに従った。当のイサクも、焼かれる直前になって、自分の運命を悟った。
このイサク生け贄物語(『創世記』22章1節〜19節)は、最終的にはこうなった。アブラハムが息子を屠ろうとしたその瞬間、神はアブラハムの信仰の確かさを知ってこれを止めた(イサクの燔祭)。神はアブラハムを祝福し、「あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう」と言った。
アブラハムの名前は、第16代アメリカ合衆国大統領「アブラハム・リンカーン」などに引き継がれている。アブラハム・リンカーンは、しばしばエイブ (Abe) の愛称で呼ばれた。日本的な表記をすれば、「Abe」は「阿部」になる。で、「イサク」は「伊作」になる。
ある種最強の名前、「阿部伊作」。ネットで検索してみたら、「阿部伊作」さん、おりました。恐らくその意味を知っての名付けと思われるが、仮に狙ってなかったとしたら、それはそれで面白い。気付かないうちに、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の始祖とその息子をまとっている次第。
ちなみに先に登場したアイザック・ニュートン(1642年 - 1727年)。Wikipediaには、「アイザック・ニュートンのオカルト研究」というページまである。「ニュートンは現在ではオカルト研究に分類される分野の著作も多く著しており、年代学・錬金術・聖書解釈(特に黙示録)についても熱心に研究していた」とある。
なんだか僕の関心対象と似ているな、と思う。なんだか僕の思考回路と似ているかもな、とも飛躍する。ニュートンは、現代で言うところの"科学的"研究の成果よりも、むしろ古代の神秘的な英知の再発見のほうが重要だと考えていたという。
僕が「アイザック」の名前に魅かれたのも、ニュートン好きだったからかも知れない。経済学者のケインズは、「ニュートンは理性の時代の最初の人ではなく、最後の魔術師だ」と発言したようだけれども。
◇おしまい