2012年9月19日水曜日

「暗黒エネルギー」とは何か


今回は「ダークエネルギー」あるいは「暗黒エネルギー」について。と言うのも、僕がたまに読む「ナショナルジオグラフィック」のニュース記事に、こんなのがあったからだ。「暗黒エネルギーを不要とする新理論」というタイトル。ただ、この記事はちょうど2年前、2009年8月のやつだけれど。

こんな風にして記事は始まる。「宇宙の膨張を加速させる謎めいた力として10年以上前から論じられてきた暗黒エネルギーは、もはや不要な理論であるとの研究結果が発表された」。ふむふむ。「提唱された新理論は、宇宙の加速膨張原理の再考を促すことになるため物議を醸している」。ほー。

「暗黒エネルギー」について関心や知識がなければ、きっと“どーでもいい話”かも知れない。けれど「この研究に携わったカリフォルニア大学デービス校のブレイク・テンプル氏は、『われわれの解が正しければ、暗黒エネルギーを持ち出さなくても宇宙膨張の加速について説明することができる』と話している」とある。

ちなみにその1年前、2008年の「ナショナルジオグラフィック」のニュース記事には、 「暗黒エネルギーの存在を示す強力な証拠」というのもある。どっちが本当かは知らないけれど。記事には「暗黒エネルギーの存在が、色分けされた画像という目に見える形で初めて表された」とある。

さらには今日、2012年9月19日の「ナショナルジオグラフィック」のニュース記事には、なんと「初撮影、暗黒エネルギーカメラ始動」との記事がある。「世界で最も高感度な、570メガピクセル(5億7000万画素)のデジタルカメラ『ダークエネルギーカメラ』が探索を開始したという内容。あくまでも“始動”で発見はまだ先になる。

で、「暗黒エネルギー」。「ナショナルジオグラフィック」では「宇宙の膨張を加速させるとみられている謎めいた力のこと」と紹介。wikipediaでは「宇宙に存在するエネルギーの半分以上を占めるとされるが正体が明らかでないエネルギー」とある。「真空のエネルギー」が有力な候補の一つとされている。

「暗黒エネルギー」とは何か。仮想的エネルギーである。何の仮想的エネルギーか。宇宙全体に均一に満たされているとする仮想的なエネルギーのことだ。「知恵蔵2012の解説」に頼ってみる。「暗黒エネルギーは、バリオン物質や暗黒物質と異なり、空間に一様に詰まっていると考えられている」。むむむ。

その前にはこんな解説文。「遠方の超新星の観測から、現在の宇宙の膨張速度は加速していることが分かっている」。「超新星」とは星の進化の最終段階で起こる大爆発に伴う増光現象のこと。「星などをつくっている通常の物質(バリオン物質)や暗黒物質は宇宙膨張を減速させるので、加速させるためには未知のエネルギーが必要になる」。

「バリオン物質?」「暗黒物質?」となる。「バリオン」とは、3つのクォークから構成される亜原子粒子で「重粒子」とも言う。「暗黒物質」とは、宇宙にある星間物質のうち電磁相互作用をせず、かつ色電化も持たない、光学的には観測できないとされる仮説上の物質。むむむ。

ちなみに「暗黒物質」の存在の間接的な発見は、1970年代に米国の天文学者によって、銀河の回転速度の観測から指摘されたという。水素原子の出す21cm輝線で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができた。という。超新星のスイス人研究者の仮説を説明するために仮定された。

「暗黒エネルギー」とは何か。知恵蔵に戻ると、「星などをつくっている通常の物質(バリオン物質)や暗黒物質は宇宙膨張を減速させるので、加速させるためには未知のエネルギーが必要になる」「このエネルギーの総称が暗黒エネルギー」。バリオン物質や暗黒物質と異なり、空間に一様に詰まっていると考えられているという。

NASAが打ち上げた宇宙マイクロ波背景放射探査衛星「WMAP」の観測結果などから、宇宙の構成要素の「4%がバリオン物質」、「22%が暗黒物質」、「約74%が暗黒エネルギー」とされている。WMAPによると、宇宙は平坦で年齢は約137億年。宇宙が始まって約38万年後に宇宙の膨れはじめ、約2億年後に最初の星ができた。

現在観測されている宇宙の加速膨張。けれど宇宙の大半の質量が正体不明。この観測事実を説明するために、「暗黒エネルギー」が登場する。宇宙論の標準的な理論(ロバートソン-ウォーカー計量)にダークエネルギーを加えるのが現在最もポピュラーな手法となっている、という。この新しい宇宙論の標準モデルをΛ-CDMモデルと呼ぶ、らしい。

現在提案されている2つのダークエネルギーの形態としては、静的な「宇宙定数」と動的な「クインテセンス」がある。この二つを区別するためには、宇宙膨張を高い精度で測定し、膨張速度が時間とともにどのように変化しているかを調べる必要がある。「このような高精度の観測を行うことは観測的宇宙論の主要な研究課題の一つ」by wikipedia。

「宇宙定数」は、あのアインシュタインが1917年に提案したもの。静的な宇宙を表すような重力場の方程式の定常解を得るための方法だった。このときアインシュタインは、実質的に「暗黒エネルギー」にあたるエネルギーを重力と釣り合わせるために使用。しかし後に、アインシュタインの「静的宇宙」観は、「ちょっと厳しい」となった。

天文学者・ハッブルの観測によって、「宇宙は膨張しています」「静的ではありえません」となった。これにより「宇宙定数」の存在はほぼ無視されることに……。アインシュタインは「静的宇宙とは対照的な動的宇宙のアイデアを予測できなかったことは人生最大の失敗だった」と言ったとか。

けれど後に「宇宙定数」は再評価されることになる。標準ビッグバン宇宙モデルの初期条件を説明する宇宙のインフレーションモデル。これは「宇宙の初期に時空が指数関数的な膨張を遂げた」とするモデル。その原理は、アインシュタインの重力場方程式の中に現れる「宇宙項」の存在に相当する。

「宇宙項」。繰り返すけれど、宇宙は加速的に膨張している。宇宙、膨張なう。その加速膨張を説明するメカニズムとして、「宇宙項」の存在が支持されている。「宇宙定数」の源の有力な候補としては「真空のエネルギー」などが挙げられている。これを仮定した計算と、観測したものとではギャップがある。

このギャップを埋めるメカニズムが、現代宇宙論の未解決問題の一つ。「最近では、宇宙の加速膨張を担うものとして、宇宙項の可能性を含め、ダークエネルギーと総称することが普通になっている」と、wikipedia先生は教えてくれる。とにかく「暗黒エネルギー」が存在すると仮定すると、いろんなことが説明できるようになる。

あったらいいな、として登場、存在が期待されている「暗黒エネルギー」。「これまでの観測結果は、宇宙の全物質の約74%を暗黒エネルギーが占めることを示している」との記事もある。「暗黒エネルギー」とは何か。調べれば調べるほど、頭の中がダークなマター(暗黒物質)に占められていく。がほっ

◇おしまい