近代建築を語る上で外せないのが、「近代建築の五原則」というもの。僕が好きな建築家、ル・コルビュジエ(1887- 1965)が提唱したもので、「新しい建築の5つの要点」が正確な訳語らしい。
で、何が近代建築の要点かというと、(1)ピロティ、(2)屋上庭園、(3)自由な平面、(4)水平連続窓、(5)自由な立面。1931年にパリ郊外で建てられた、「Villa Savoye」あるいは「サヴォア邸」が、その原則を存分に取り入れた、最高傑作とされている。
緑の芝生の中に設けられた、四角い空間。そこに建つ白い建造物。2階部が浮いて見え、屋上庭園はプライバシー保護の観点から外からは隠された設計。構造は鉄筋コンクリート造。「サヴォア邸」は今となっては、“よくある近代建築”に見えるが、その当時の斬新・衝撃度は半端なかった。
もちろん、今でもその“新しさ”は際立っている。実際、「サヴォア邸」のような建築物をしょっちゅう見るかと言うと、そんなでもない。つまり主流でない。僕は思うのだけれど、やはり“建築の美”、その一部は、主流でないところに根源がある気がしている。
その観点で言えば、日本の街や農村に建つ西洋建築、洋館が観光スポットになりがちなように、ヨーロッパの街に日本式建築があれば、現地の人々からは観光に値する、「何だか美的建築かも!」と思うことになる…ならないかもだが。まあ個人的に「美には希少性も関わっている」と思っているのです。
話は飛んでしまったけれど、「サヴォア邸」は、「新しい建築の5つの要点」を“発見”した張本人、ル・コルビュジエの設計。彼は1887年生まれだから、彼が40代半ばにデザインしたもの。そしてフランス語で「杭」を意味する「ピロティ構造」をしっかり取り入れている。
話はまた飛んでしまうが、僕はかつて法政大学の市ケ谷キャンパスに通っていた時代がある。この大学のメイン校舎中央には、どーんと「ピロティ」があった。そのピロティ下で、酒好きな学生たちで、宴会して遊んでいた記憶がある。けっこうやっていた。今思えば、そうした“ピロティ下の思い出”は、ル・コルビュジエがいたからあるようなものだ。過言でなしに。
そこで僕とル・コルビュジエはつながってくる。僕らは生きる時代も住む国も異なるが、交差してくる。絡んでくる。ピロティ下の思い出、その一点においてのみかも知れないけれど。うん、ル・コルビュジエは僕の人生、記憶、行動に、間違いなく影響を与えた。全くもって大した影響とは言えないのだけれど、過言でなしに。
そんなル・コルビュジエ。すごく簡単にこの偉大な建築家の情報を整理すると、「近代建築の三大巨匠」とされ、フランスで主に活躍、“モダニズム建築”を設計。鉄筋コンクリート造や鉄骨造という新技術を背景に、「近代建築の五原則」を唱え、機能的・合理的で、地域性や民族性を超えた普遍的なデザインを追求した。
いろいろ作品を残したが、今回は「サヴォア邸」のみに触れておこう。なぜなら、もうパソコンの電源を切る時間になってしまったから。「現代残業の五原則」を、いつか僕は提唱することになりそうだが、その一つには、「強制終了があり得る」を入れておきたい。例えば、こんな風に。全て中途半端に。
ぷちっ。
◇おしまい